第10章
p155 式10.1
0.55 μmの波長を持つ光子のエネルギーは、3.6×10-19 Jとの説明があるが、これは、「50℃の水温を持つ水のエネルギーは◯◯Jである。」と述べるようなもので、意味を成さない。この点については、まさに本稿が第1章で指摘したように、3.6×10-19 J/個と表現すべきである。2つ下の式では、3.6×10-19 J/photonと書いてあり、こちらは紛れはないが、同じものに2種類の単位が用いられており、まぎらわしい。
p159 図10.2
この図は、以下のように書き直すとわかりやすい。
放射フラックス密度は、
射出時には 放射発散度
入射時には 放射度(放射照度)
と呼ばれる。
射出時には 放射発散度
入射時には 放射度(放射照度)
と呼ばれる。
p158 11行目
ここでは、放射フラックスとフラックス密度を明確に分けて定義している。他のフラックスについても同様の扱いをすべきであろう。例:フラックスを求める式としてリストされている、式7.9~7.14はすべてフラックス密度を求める式である。
p158 13行目など
ある面(空間に想定した面でも良い)の面積あたりの放射フラックスを放射フラックス密度と呼ぶが、実在する面に到達する放射フラックスの密度を放射度(放射照度)と呼び、その面から出ていく放射フラックスの密度を放射発散度と呼ぶ。
この2つを混同したり「光強度」などと呼んだりしないようにすること。
この2つを混同したり「光強度」などと呼んだりしないようにすること。
p160 15行目
単位記号中に物質名を入れる表記法(mol quanta m-2s-1)はSIには存在しない。mol m-2 s-1で良いはず。
ここで、直達日射の光合成有効光量子フラックス密度、光合成有効放射(照)度、照度の間の換算係数を挙げておく(本書の記載を再掲しているだけ)。
1 mol m-2 s-1 → 217 kJ s-1 m-2 だから、1000 μmol m-2 s-1は、217 W/m2に相当する。
1 μmol m-2 s-1 → 51 lx だから、10,000 lxは、196 μmol m-2 s-1に相当する。
したがって、100 W m-2は、23,502 lxに相当する。ただし、この係数を使う時は、日射計で測定した放射度をそのまま換算はできないので注意する(光合成有効放射度にしてから換算する)こと。
ここで重要なことは、これは、直達光(晴天日)の換算係数であり、散乱光(曇雨天日)や人工照明(蛍光灯、白熱電球、LEDなど)の場合の換算係数とは異なる、ということである。
ここで、直達日射の光合成有効光量子フラックス密度、光合成有効放射(照)度、照度の間の換算係数を挙げておく(本書の記載を再掲しているだけ)。
1 mol m-2 s-1 → 217 kJ s-1 m-2 だから、1000 μmol m-2 s-1は、217 W/m2に相当する。
1 μmol m-2 s-1 → 51 lx だから、10,000 lxは、196 μmol m-2 s-1に相当する。
したがって、100 W m-2は、23,502 lxに相当する。ただし、この係数を使う時は、日射計で測定した放射度をそのまま換算はできないので注意する(光合成有効放射度にしてから換算する)こと。
ここで重要なことは、これは、直達光(晴天日)の換算係数であり、散乱光(曇雨天日)や人工照明(蛍光灯、白熱電球、LEDなど)の場合の換算係数とは異なる、ということである。
p160 脚注*1
我が国において、「PARとPPFDは異なる」との主張をよく見かけるが、これは的はずれな主張である。
PARとは「photosynthetically acitive radiation」の略で、光合成に有効な波長範囲の光(放射)のことで、可視光、紫外線、赤外線などと同じ概念レベルの用語(波長範囲を区切った光の区別)である。
PPFD(Photosynthetic Photon Flux Density)は、PARがある面に入射している時、その強さを表す際に光量子のフラックス密度(単位:mol m-2 s-1)で表したものである。もちろん、このPARの強さを放射エネルギーのフラックス密度(単位:J m-2 s-1)で表すこともできるが、なぜかそれにはPI(photosynthetic irradiance)やPAI(photosynthetically active irradiance)などという呼称はついていない。日本語では光合成有効放射(照)度と呼べば何の問題もない。
そのため、「PAR」を「PAI」や「PI」の代わりに使う誤用が生まれ、PARとPPFDを比較するような誤りが生まれていると考えられる。
繰り返せば、PARとは、光合成有効放射の受光強度をエネルギーフラックス密度の次元で表したものではなく、光合成に有効な波長範囲を持つ光そのもののことである。
「そうではない。放射(radiation)とは電磁波のエネルギー表現である。」と、上記とは異なる定義を持つ人もいると思うが、その場合には以上の議論は成立しない。 しかし、一般には光を含む電磁放射(electromagnetic radiation)は、波の性質と粒子の性質を持つ、と説明され、これは、「放射とは波長別のエネルギーや光量子が流れている現象」ということで、放射がエネルギーの流れを表すということではない。 なお、本書では、「放射」=「光」という前提で議論を進めている。
「そうではない。放射(radiation)とは電磁波のエネルギー表現である。」と、上記とは異なる定義を持つ人もいると思うが、その場合には以上の議論は成立しない。 しかし、一般には光を含む電磁放射(electromagnetic radiation)は、波の性質と粒子の性質を持つ、と説明され、これは、「放射とは波長別のエネルギーや光量子が流れている現象」ということで、放射がエネルギーの流れを表すということではない。 なお、本書では、「放射」=「光」という前提で議論を進めている。
p161 11行目
4つの率の内、放射率だけはわかりにくい。その他の率については、その下の式の説明で理解できるだろう。
すべての物体は自ら放射を行うが、ある物体が自ら放射するエネルギーは、同じ温度を持つ黒体からの放射エネルギーよりも少なくなる。放射率(ε)とは、その割合のことである(式10.9)。
6行目に、反射、透過、吸収、射出とある。これらの率もそのまま「率」を加えたものにすればいいと思うのだが、なぜか本書では「射出率」と呼ばずに「放射率」と呼んでいる。
すべての物体は自ら放射を行うが、ある物体が自ら放射するエネルギーは、同じ温度を持つ黒体からの放射エネルギーよりも少なくなる。放射率(ε)とは、その割合のことである(式10.9)。
6行目に、反射、透過、吸収、射出とある。これらの率もそのまま「率」を加えたものにすればいいと思うのだが、なぜか本書では「射出率」と呼ばずに「放射率」と呼んでいる。
p162 1~9行目
放射率と吸収率は一般に等しい(p163 下から13行目)。通常、吸収率は太陽光に含まれる可視光から近赤外光について用いられ、放射率は4行目以降にあるように、長波放射(波長の長い赤外光)について用いられる。
なお、 放射率だけは積分しても放射係数とは呼ばず、放射率のままとなる。説明は理解できるがややこしさは否めない。例えば、p163 下から9行目に「黒色顔料のカーボンブラックの放射率と吸収率は可視放射においてほぼ1である。」とあるが、この放射率は波長あたりの放射率だろうか、積分した後の放射率であろうか。ここから後ろはこの「率」と「係数」の混乱が何度も出てくる。
なお、 放射率だけは積分しても放射係数とは呼ばず、放射率のままとなる。説明は理解できるがややこしさは否めない。例えば、p163 下から9行目に「黒色顔料のカーボンブラックの放射率と吸収率は可視放射においてほぼ1である。」とあるが、この放射率は波長あたりの放射率だろうか、積分した後の放射率であろうか。ここから後ろはこの「率」と「係数」の混乱が何度も出てくる。
p162 下から2行目
p163 3行目、6行目
反応R(λ)とは、ここでは、植物が吸収した放射に対する何らかのリアクションのことで、温度上昇や光合成などが考えられる。
p162 最下行
「日射のほとんどは大気を透過し(図10.5)参照」とあるが、図10.5の点線と実線を比較して「ほとんど透過する」と言えるだろうか?
これは、原文の「most」を「ほとんど」と訳したためだと考えられる。日本語では「ほとんど」というと90%以上の率を想像してしまうが、英語の「most」は「大多数」程度の話で70%以上なら良さそうである。なお、英語で90%以上を表現する時は、「almost all」というのが一般的だろう(私の主観)。
これは、原文の「most」を「ほとんど」と訳したためだと考えられる。日本語では「ほとんど」というと90%以上の率を想像してしまうが、英語の「most」は「大多数」程度の話で70%以上なら良さそうである。なお、英語で90%以上を表現する時は、「almost all」というのが一般的だろう(私の主観)。
p163 1行目
「直達日射によって葉が熱せられる場合、葉の吸収率は約0.5(図11.5)」とあるが、ここも間違えやすい。
まず、「吸収率(absorptivity)」は、p161で定義されるように、ある波長における入射フラックスに対する吸収フラックスの割合である。この値は、光源や照射されている光の持つ波長域とは関係のない、表面の特性値である。それなのに、「吸収率は、放射と葉の特性との相互作用に依存する」と書いてある。混乱の予感がする。
そうしてみると、「葉の吸収率は約0.5」とは、どの波長での値のことだろうか?図11.5の実線のグラフの平均値のことだろうか?この部分の原文は「the solar absorptivity is about 0.5」なので「吸収率」と訳したのだろうが、それでは、辻褄が合わない。
この0.5という値は、直達光が葉にあたっている時に、照射されたエネルギーのうちどのぐらいが葉に吸収されたか、という一般的な意味での「吸収率」である。しかし、これは、「吸収されたエネルギー/受けたエネルギー」を直達光の波長範囲で積分した式、つまり式10.2を吸収率で書き直したもの、つまり α であり、まさに「吸収係数」である。
つまり、ここで吸収率と書かずに吸収係数と書いておいてくれれば、何の問題もなかったのに、吸収率と書いてあったための混乱である(原文の誤り)。
同じように、その直後の「葉のPARの吸収率は約0.85で」とあるのは、「葉のPARの吸収係数は約0.85で」の誤りとなる。
加えて、誤訳があり、この「吸収率」の原文は「The relevant absorptivity」で「有効吸収率」とでも呼ぶべきもので、葉の特性である吸収率と葉の機能とを組み合わせたものである。つまり、多くを吸収しても作用効率が低ければ、実質的にたいして吸収しなかったのと同じ、ということを説明している。
なお、「吸収された放射エネルギーのすべてが熱に変換される」とあるが、ほんの一部(0~5%)ではあるが、光合成に利用され、化学エネルギーとして貯えられ、熱にはならない。
まず、「吸収率(absorptivity)」は、p161で定義されるように、ある波長における入射フラックスに対する吸収フラックスの割合である。この値は、光源や照射されている光の持つ波長域とは関係のない、表面の特性値である。それなのに、「吸収率は、放射と葉の特性との相互作用に依存する」と書いてある。混乱の予感がする。
そうしてみると、「葉の吸収率は約0.5」とは、どの波長での値のことだろうか?図11.5の実線のグラフの平均値のことだろうか?この部分の原文は「the solar absorptivity is about 0.5」なので「吸収率」と訳したのだろうが、それでは、辻褄が合わない。
この0.5という値は、直達光が葉にあたっている時に、照射されたエネルギーのうちどのぐらいが葉に吸収されたか、という一般的な意味での「吸収率」である。しかし、これは、「吸収されたエネルギー/受けたエネルギー」を直達光の波長範囲で積分した式、つまり式10.2を吸収率で書き直したもの、つまり α であり、まさに「吸収係数」である。
つまり、ここで吸収率と書かずに吸収係数と書いておいてくれれば、何の問題もなかったのに、吸収率と書いてあったための混乱である(原文の誤り)。
同じように、その直後の「葉のPARの吸収率は約0.85で」とあるのは、「葉のPARの吸収係数は約0.85で」の誤りとなる。
加えて、誤訳があり、この「吸収率」の原文は「The relevant absorptivity」で「有効吸収率」とでも呼ぶべきもので、葉の特性である吸収率と葉の機能とを組み合わせたものである。つまり、多くを吸収しても作用効率が低ければ、実質的にたいして吸収しなかったのと同じ、ということを説明している。
なお、「吸収された放射エネルギーのすべてが熱に変換される」とあるが、ほんの一部(0~5%)ではあるが、光合成に利用され、化学エネルギーとして貯えられ、熱にはならない。
p163 5行目
p163 12行目
「赤外放射温度計の波長帯8~14 μmの反応は1.0である。」とは、赤外放射温度計は、波長8~14 μmの光をもれなく計測することができるということ。
その4行下の、「赤外放射温度計は土壌の温度ではなくガラスの温度を測定していることになる。」は、誤りの可能性が高い。ここでの「ガラス」とは表10.1の透過媒体(ガラスレンズ、原文ではガラス窓)のことだと思われるが、もしこのガラスが熱放射を通さなければ、正しく測定対象の温度が測れない。赤外放射温度計に用いられるガラスは測定する波長帯を通すような特性を持っているはずである。
その4行下の、「赤外放射温度計は土壌の温度ではなくガラスの温度を測定していることになる。」は、誤りの可能性が高い。ここでの「ガラス」とは表10.1の透過媒体(ガラスレンズ、原文ではガラス窓)のことだと思われるが、もしこのガラスが熱放射を通さなければ、正しく測定対象の温度が測れない。赤外放射温度計に用いられるガラスは測定する波長帯を通すような特性を持っているはずである。
p164 2行目から
この4つの反射率の定義などについての説明は極めてわかりにくい。それらと、BRDFとBRFもついでに解説する。
二方向性反射率
以下の例を通して、説明を試みる。図を描きながら読んでほしい。
方向性を持っている放射度100 W/m2の光が、面積1 m2の完全拡散反射板に入射しているとする。すると、全半球方向(立体角2πの範囲)に計100Wの散乱放射が射出される。
このうち天頂方向への反射は、1 srあたり、その1/(2π)倍の15.9 W/srとなる。天頂方向から反射面を見ているので、反射面の面積は見ている面積と同じなので、放射輝度は、15.9 W/(sr m2)となる。したがって、この時の二方向性反射率は、15.9 W/(m2 sr) / 100 W/m2=0.159 sr-1となる。完全拡散反射している時は、反射方向に関わらず放射輝度は一定なので、どの角度からみても放射輝度は、15.9 W/(sr m2)である(補足を後述)。
次に、同じ入射光の半分が鏡のように方向性を持って反射し(ここでは、0.1 srの角度範囲に反射すると仮定する)、半分が完全拡散反射をするような面を想定してみよう。この時、方向性を持った反射を受けるような角度と受けないような角度における放射輝度と二方向性反射率を計算してみる。
拡散反射からの放射輝度は、完全拡散の場合の半分になるので、7.96 W/(m2 sr)となる。方向性反射の放射輝度は、その方向に反射光のすべてが含まれるので(50 Wの放射が0.1 srに含まれているので)500 W/(m2 sr)となり、この2つの合計、507.96 W/(m2 sr)が放射輝度になる。したがって、この時の二方向性反射率は、507.96 W/(m2 sr) / 100 W/m2 = 5.0796 sr-1となる。このように、p164 下から4行目に書いてあるように、二方向性反射率は1より大きくなることがある。しかし、そもそも、分母と分子の次元が異なるので、この値が1だからといって分子と分母が等しい(同じもの)、というわけではない。
方向性反射を受けない角度における放射輝度は、拡散反射分の7.96 W/(m2 sr)だけなので、二方向性反射率は、7.96 W/(m2 sr) / 100 W/m2 = 0. 0796 sr-1となる。
方向性-半球性反射率 / 二半球性反射率
ある面に入射する放射のフラックス密度(=放射度)に対する、その面が反射する放射の放射輝度を全方向に積算した値(=放射発散度)の割合。つまり、入射する光に対する反射される光の割合。入射する光が方向性を持っているか持っていないものも含むかでどちらかになる。単位は、当然ながらない(0~1の値)。この2つは理解しやすいだろう。
半球性-方向性反射率
これは、二方向性反射率の入射光が方向性を持たない場合(例えば曇天日の空)で、それ以外は同じ考え方が適用できるはず。しかし、二方向性反射率には単位として、sr-1と記載されているが、なぜかこちらにはない。こちらの単位もsr-1でなければおかしい。
二方向性反射分布関数(BRDF)
これは、二方向性反射率が角度の函数であるため、その角度を0から2π srまで変化させた時のグラフ全体を指す。しかし、ある角度での値は、二方向性反射率そのものである。
二方向性反射係数(BRF)
この値は、説明があるように、
(対象面からの反射放射輝度)/(完全拡散面からの反射放射輝度)
で定義される。測定方法は、p165 下から6行目からにあるように、完全拡散反射板からと対象面からの反射の放射輝度を比較すればよい。この方法では、測定点における放射度の比率となっているが、同じ面積、同じ視野角での比較なので放射輝度の比率と等しくなる。
p164 下から5行目に二方向性反射係数は1を超えないと読める記述があるが、誤りとしか思えない。二方向性反射係数の測定時に、対象面が強い方向性を持つ反射形質を持っていて、たまたま方向性の反射が多く含まれる方向からの測定をすれば、上記の分数は1を大きく超えてもおかしくないだろう。
ここまで述べてきたように、この部分は誤りなのか私の誤解なのか解せない説明が非常に多い。どなたかきれいにまとめてもらえませんか。
二方向性反射率
以下の例を通して、説明を試みる。図を描きながら読んでほしい。
方向性を持っている放射度100 W/m2の光が、面積1 m2の完全拡散反射板に入射しているとする。すると、全半球方向(立体角2πの範囲)に計100Wの散乱放射が射出される。
このうち天頂方向への反射は、1 srあたり、その1/(2π)倍の15.9 W/srとなる。天頂方向から反射面を見ているので、反射面の面積は見ている面積と同じなので、放射輝度は、15.9 W/(sr m2)となる。したがって、この時の二方向性反射率は、15.9 W/(m2 sr) / 100 W/m2=0.159 sr-1となる。完全拡散反射している時は、反射方向に関わらず放射輝度は一定なので、どの角度からみても放射輝度は、15.9 W/(sr m2)である(補足を後述)。
次に、同じ入射光の半分が鏡のように方向性を持って反射し(ここでは、0.1 srの角度範囲に反射すると仮定する)、半分が完全拡散反射をするような面を想定してみよう。この時、方向性を持った反射を受けるような角度と受けないような角度における放射輝度と二方向性反射率を計算してみる。
拡散反射からの放射輝度は、完全拡散の場合の半分になるので、7.96 W/(m2 sr)となる。方向性反射の放射輝度は、その方向に反射光のすべてが含まれるので(50 Wの放射が0.1 srに含まれているので)500 W/(m2 sr)となり、この2つの合計、507.96 W/(m2 sr)が放射輝度になる。したがって、この時の二方向性反射率は、507.96 W/(m2 sr) / 100 W/m2 = 5.0796 sr-1となる。このように、p164 下から4行目に書いてあるように、二方向性反射率は1より大きくなることがある。しかし、そもそも、分母と分子の次元が異なるので、この値が1だからといって分子と分母が等しい(同じもの)、というわけではない。
方向性反射を受けない角度における放射輝度は、拡散反射分の7.96 W/(m2 sr)だけなので、二方向性反射率は、7.96 W/(m2 sr) / 100 W/m2 = 0. 0796 sr-1となる。
方向性-半球性反射率 / 二半球性反射率
ある面に入射する放射のフラックス密度(=放射度)に対する、その面が反射する放射の放射輝度を全方向に積算した値(=放射発散度)の割合。つまり、入射する光に対する反射される光の割合。入射する光が方向性を持っているか持っていないものも含むかでどちらかになる。単位は、当然ながらない(0~1の値)。この2つは理解しやすいだろう。
半球性-方向性反射率
これは、二方向性反射率の入射光が方向性を持たない場合(例えば曇天日の空)で、それ以外は同じ考え方が適用できるはず。しかし、二方向性反射率には単位として、sr-1と記載されているが、なぜかこちらにはない。こちらの単位もsr-1でなければおかしい。
二方向性反射分布関数(BRDF)
これは、二方向性反射率が角度の函数であるため、その角度を0から2π srまで変化させた時のグラフ全体を指す。しかし、ある角度での値は、二方向性反射率そのものである。
二方向性反射係数(BRF)
この値は、説明があるように、
(対象面からの反射放射輝度)/(完全拡散面からの反射放射輝度)
で定義される。測定方法は、p165 下から6行目からにあるように、完全拡散反射板からと対象面からの反射の放射輝度を比較すればよい。この方法では、測定点における放射度の比率となっているが、同じ面積、同じ視野角での比較なので放射輝度の比率と等しくなる。
p164 下から5行目に二方向性反射係数は1を超えないと読める記述があるが、誤りとしか思えない。二方向性反射係数の測定時に、対象面が強い方向性を持つ反射形質を持っていて、たまたま方向性の反射が多く含まれる方向からの測定をすれば、上記の分数は1を大きく超えてもおかしくないだろう。
ここまで述べてきたように、この部分は誤りなのか私の誤解なのか解せない説明が非常に多い。どなたかきれいにまとめてもらえませんか。
P164 放射輝度補足説明
上で、「完全拡散反射している時は、反射方向に関わらず放射輝度は一定」と書いたが、少し長くなるが以下のような理由がある。
完全拡散している面の例として、白い紙を想像してほしい。この白い紙を真上から見たときと斜めから見た時に紙の明るさ(白さ)は変化するだろうか。しないはずである。放射輝度とはこの「見た時の明るさ」をエネルギーで表したものである。
同じ面積の紙を真上から見たときと斜めから見た時では、見える紙の面積(見かけの面積)が変化する。したがって、紙全体から見る方向に反射される光エネルギーも変化する。具体的には、見る角度が天頂から低くなるにつれ(天頂角が大きくなるにつれ)、紙からの反射エネルギーは小さくなる。一方、見かけの紙の面積も同じ比率で小さくなるので、視野範囲(視野角)あたりの反射光のエネルギーフラックス密度、すなわち放射輝度、は変わらない。
これと同じことが、距離と放射輝度との関係についてもいえる。テレビ画面を近くで見ても遠くで見ても目に見える明るさは同じである。遠いからといって画面が暗くなる感じはしない。遠くなれば、目に届くエネルギーは小さくなるが、そのエネルギーは遠くなって小さく見える画面から発せられているので、放射輝度に変化はない。
完全拡散している面の例として、白い紙を想像してほしい。この白い紙を真上から見たときと斜めから見た時に紙の明るさ(白さ)は変化するだろうか。しないはずである。放射輝度とはこの「見た時の明るさ」をエネルギーで表したものである。
同じ面積の紙を真上から見たときと斜めから見た時では、見える紙の面積(見かけの面積)が変化する。したがって、紙全体から見る方向に反射される光エネルギーも変化する。具体的には、見る角度が天頂から低くなるにつれ(天頂角が大きくなるにつれ)、紙からの反射エネルギーは小さくなる。一方、見かけの紙の面積も同じ比率で小さくなるので、視野範囲(視野角)あたりの反射光のエネルギーフラックス密度、すなわち放射輝度、は変わらない。
これと同じことが、距離と放射輝度との関係についてもいえる。テレビ画面を近くで見ても遠くで見ても目に見える明るさは同じである。遠いからといって画面が暗くなる感じはしない。遠くなれば、目に届くエネルギーは小さくなるが、そのエネルギーは遠くなって小さく見える画面から発せられているので、放射輝度に変化はない。
p164 下から5行目
「ここでは重要ではないが、……は興味深い。」とあるが、原文にはそのようなことは書いてない。「An interesting fact is worth noting here;」とあり、これは「ここで指摘しておく価値のある面白い事実がある。」ということで、むしろ重要なことである。notingをnothingだと勘違いしたのかもしれない。
しかし、その内容が上記のように混乱するものなので頭を抱える。
しかし、その内容が上記のように混乱するものなので頭を抱える。
p165 1行目
ここに「日射計は、直達日射が入射の大半を占める快晴日に、植物群落の放射度の測定に使用できる。」とあるので、そうでない日、例えば曇天日には使用できないようにも読める。しかし、もちろんそれは正しくない。日射計は、散乱日射しかない曇天日にも使用できる。これは、原文の「could be used to measure」を「測定に使用できる」と訳してしまったためで、この「could」は、「たとえば、こんなこともできますよ」という意味を持っている。
この文とそれに続く数行を原文の意味がわかるように訳し直してみる。
「ある日射計を直達日射が入射の大半を占める晴れた日における作物(群落上)の放射度を測るのに使ったとしよう。その後、この日射計をひっくり返して、作物に反射された光の放射度を測定する。入射光に対するこの反射された光の比率が二半球性反射率となる。」
この文とそれに続く数行を原文の意味がわかるように訳し直してみる。
「ある日射計を直達日射が入射の大半を占める晴れた日における作物(群落上)の放射度を測るのに使ったとしよう。その後、この日射計をひっくり返して、作物に反射された光の放射度を測定する。入射光に対するこの反射された光の比率が二半球性反射率となる。」
p165 5行目
「実質的に」は原文にない。なぜこの語を追加したかは不明。
p165 6行目
「この2つの測定は似ているが等しいとは限らない」の説明をする。
直達日射があろうがなかろうが、全半球から入射する光に対する全半球に反射する光の割合(=二半球性反射率)を測定することはできる。この時、直達日射があると、ある特定の角度からの入射の放射度が大きく、それ以外の角度からの入射の放射度が相対的に小さくなる。一方、直達日射がないと入射の放射度は角度に依存しない。
作物の反射率は入射の角度によって変化する(このことを「方向性のある太陽光線と植物群落表面の相互作用には方向性がある」と表現している)。そのため、入射エネルギーの多くが方向性を持っている直達日射の反射係数と方向性を持たない散乱日射の反射係数は異なってくる。これが、直達日射がある時とない時の二半球性反射率が異なる理由である。
直達日射があろうがなかろうが、全半球から入射する光に対する全半球に反射する光の割合(=二半球性反射率)を測定することはできる。この時、直達日射があると、ある特定の角度からの入射の放射度が大きく、それ以外の角度からの入射の放射度が相対的に小さくなる。一方、直達日射がないと入射の放射度は角度に依存しない。
作物の反射率は入射の角度によって変化する(このことを「方向性のある太陽光線と植物群落表面の相互作用には方向性がある」と表現している)。そのため、入射エネルギーの多くが方向性を持っている直達日射の反射係数と方向性を持たない散乱日射の反射係数は異なってくる。これが、直達日射がある時とない時の二半球性反射率が異なる理由である。
p165 9行目
「IFOV」はInstantaneous Field of Viewの略で、瞬時視野という意味である。したがって、「狭視野IFOV」は重言(「馬から落馬」、「お祝いの祝辞」のような表現)である。原文は、「narrow IFOV」なので「狭IFOV」であるが、日本語として分かりにくいと考えたのかもしれない。
p166 1行目
「表面の法線と光線がなす角度」は、図10.3ではθのことである。一方、3行目に「天頂角θ」との記述がある。この2つの角度は同じものである(8行目に説明あり)。12行目にもう一度「太陽が表面の法線となす角度」と出て来るが、ここでなぜθや天頂角の語を使わないのだろうか。英語では(日本語でも)表現の美しさという点で、同じ単語を繰り返し使うのを避けることがあるが、学術書では同じものには同じ表現をしてくれる方がありがたい。
p166 5行目
表面に垂直な入射光線の照射面積をApとしているが、添字のpはperpendicular(垂直)から来ている。
p166 6行目
ランベルトの余弦則は、本来は完全拡散面(どの方向にも同じように光を射出する面)が光を射出している時(例:黒体からの長波放射の射出)、放射輝度(1 m2から射出された光の1 srあたりのエネルギーフラックス)は、その面の法線との角度、θ、の余弦(cosθ)に比例する、というものであるが、方向性を持つ光(平行光)を受光する時、放射度はその面の法線と光線の作る角、θ、の余弦に比例する、というように全く同様の考え方ができる。
p166 例題10.3
この問題を読むと、「放射輝度N Wm-2sr-1の等方向な放射をしている半球体」とは太陽のようなもので、それと地表面(地球表面)の関係についての問題のように思うかもしれないが、そうではない(「半球」とあるが、地球から見て太陽の反対側の半球はないのと同じなので無視できる。)。
これは、俎(まな)板に料理のボウルのようなものをかぶせて、その内面が光っている時の俎板の放射度についての問題である。
解答の解説はすぐに理解できたであろうか。このような考え方に慣れていないものにとっては、極めつけに難しいのではないかと想像する。以下の説明でなんとか理解していただければと思う。
これは、俎(まな)板に料理のボウルのようなものをかぶせて、その内面が光っている時の俎板の放射度についての問題である。
解答の解説はすぐに理解できたであろうか。このような考え方に慣れていないものにとっては、極めつけに難しいのではないかと想像する。以下の説明でなんとか理解していただければと思う。
https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol10.htmlより
上図のような状態を考える。本文では半球内面の放射輝度はNであるが、ここでは図に合わせてIoとしてある。図と照らし合わせながら以下を読んでほしい。
半球全体を考える前に、球表面にある幅を持つ帯(輪帯)を想定する。この輪帯の幅は、r・dθである。輪帯の半径はr・sinθなので、輪帯の一周の長さは、2π・r・sinθである。したがって、輪帯の面積dSは、r・dθ×2π・r・sinθ=2π・r2・sinθ・dθとなる。
半径rの球の表面積は4π・r2で、球の立体角は4πなので、球の一部の表面積はそれに相当する立体角に変換できる(r2で割れば良い)。したがって、輪帯の立体角dωは、2π・r2・sinθ・dθ ÷ r2=2π・sinθ・dθとなる。
dωの立体角をもって入射する光の、点Oにおける放射度は、もし、入射角に垂直な面であれば、Io・dωである(放射輝度×入射立体角=放射度より)。実際には表面は水平なので余弦則によりIo・dω×cosθとなる。
全半球面からの放射は、この式をθ=0からθ=π/2まで積分すればよい。上図の輪帯からの放射を天頂部から水平線部まで積分することになる。
半球全体を考える前に、球表面にある幅を持つ帯(輪帯)を想定する。この輪帯の幅は、r・dθである。輪帯の半径はr・sinθなので、輪帯の一周の長さは、2π・r・sinθである。したがって、輪帯の面積dSは、r・dθ×2π・r・sinθ=2π・r2・sinθ・dθとなる。
半径rの球の表面積は4π・r2で、球の立体角は4πなので、球の一部の表面積はそれに相当する立体角に変換できる(r2で割れば良い)。したがって、輪帯の立体角dωは、2π・r2・sinθ・dθ ÷ r2=2π・sinθ・dθとなる。
dωの立体角をもって入射する光の、点Oにおける放射度は、もし、入射角に垂直な面であれば、Io・dωである(放射輝度×入射立体角=放射度より)。実際には表面は水平なので余弦則によりIo・dω×cosθとなる。
全半球面からの放射は、この式をθ=0からθ=π/2まで積分すればよい。上図の輪帯からの放射を天頂部から水平線部まで積分することになる。
ここで、上記のように
なので、
となり、ここで
なので(高校で習う公式。覚える必要はない。)、
ということで、放射度は、放射輝度にπをかけた値となる。解答中に「表面の放射度は、常に放射輝度のπ倍」とあるが、値がπ倍になるだけで、放射度と放射輝度は次元が異なるので比較することはできない。なお、立体角の計算中に半径rは消えてしまうので、半球ドームの大きさと点Oにおける放射度とは関係がないことがわかる。
p166 下から5行目
「理想的な完全拡散面」とは、光がどの方向から入射してもそのすべてを全半球方向に散乱させて反射させるもので、可視光で見れば、いわゆる「ツヤ消し白」の表面のことで白いチョークのようなものとなる。
理想ランベルト面にどのような方向から方向性を持つ光が入射しても、それらは全半球に均等に反射するので、その方向性-半球性反射率は1である。
理想ランベルト面にどのような方向から方向性を持つ光が入射しても、それらは全半球に均等に反射するので、その方向性-半球性反射率は1である。
p167 14行目
「広い波長帯については、放射の減衰は厳密には指数関数則に従わない。」とは、どういうことだろうか。
狭い波長帯では式10.4が成立するのに、狭い波長帯の集まりである広い波長帯では、それが成り立たない、ということらしい。これは、たぶん、波長によって式10.4のkの値(吸光係数)が異なるため、広い波長帯の全体を一つの式(一つのk)で表現することはむずかしい、ということだろう。
狭い波長帯では式10.4が成立するのに、狭い波長帯の集まりである広い波長帯では、それが成り立たない、ということらしい。これは、たぶん、波長によって式10.4のkの値(吸光係数)が異なるため、広い波長帯の全体を一つの式(一つのk)で表現することはむずかしい、ということだろう。
p167 例題10.4
「大気路程」とは、鉛直方向の大気の厚さと実際に太陽光の通った大気の距離との比率のこと。θは天頂角である。ここでは、地表面が平らだと仮定しているが、実際には地表面と大気層は丸みを帯びているので、θが90°に近くなると(太陽高度が低くなると)誤差が大きくなる。
p169 式10.5
Ebの単位は、W/m3であるが、これは当然ながら体積あたりの放射フラックスではなく、波長1 mあたりの放射フラックス密度である。
p169 8行目
「本書では4 μmを日射波長域の最大値・・・と定義する。」とあるが、通常は2~2.5 μm(2000~2500 nm)までを日射の範囲の上限として差し支えない(図10.5にあるように、2.5~3.0 μmの日射は大気に吸収され、3.0 μm以上の日射は無視できるくらい弱いから。)。
p170 式10.6
式の分子に単位記号が紛れ込んでいる。本式は、
ここで、
λm:最大放射発散度の波長、m
q:係数、2897×10-6 K m
T:表面温度、K
とでも表記すべきもの。
λm:最大放射発散度の波長、m
q:係数、2897×10-6 K m
T:表面温度、K
とでも表記すべきもの。
p170 図10.5
大気圏外のスペクトル分布は人工衛星で測定したものなのだろうが、所々に凹みがあるのはなぜだろうか。太陽は一般に完全黒体(図10.4のような放射をする)と仮定するが、そうでもないのか。それとも宇宙で光が何かに吸収されているのか。
本図より、波長が短い光ほど大気中で反射あるいは吸収されていることがわかる。
本図より、波長が短い光ほど大気中で反射あるいは吸収されていることがわかる。
p171 9行目
レーリー散乱とミー散乱の説明があるが、その現象の境界は粒子の大きさが光の波長より大きいかどうか、である(小さければレーリー散乱、大きければミー散乱をする)。太陽光の波長は0.3~4 μm(うち可視光は0.38~0.72 μm)なので、PM2.5(直径2.5 μmより小さな固体粒子)がいくら小さいと言っても可視光においてレーリー散乱をして空の色を変えることはなく、ミー散乱により灰色の空をもたらすだけである。
なお、窒素分子の直径は0.38 nm、酸素分子は0.36 nm、水蒸気は0.29 nm、CO2ですら0.46 nmで、可視光の最短波長の約300 nmよりずっと小さい。
レーリー散乱は光のエネルギーを失うことなく波長を変えることができるので、例えば青の光を赤の光に変えて(夕焼けのように)光合成速度を増大できる、などと考えることは自由だが、無理である。
文中に「太陽は赤く見える」とあるが、太陽を赤く絵に描くのは日本人の子供だけで、外国人に太陽の色を尋ねればほとんどが黄色だと答えるだろう。
なお、窒素分子の直径は0.38 nm、酸素分子は0.36 nm、水蒸気は0.29 nm、CO2ですら0.46 nmで、可視光の最短波長の約300 nmよりずっと小さい。
レーリー散乱は光のエネルギーを失うことなく波長を変えることができるので、例えば青の光を赤の光に変えて(夕焼けのように)光合成速度を増大できる、などと考えることは自由だが、無理である。
文中に「太陽は赤く見える」とあるが、太陽を赤く絵に描くのは日本人の子供だけで、外国人に太陽の色を尋ねればほとんどが黄色だと答えるだろう。
p172 図10.6
288 Kの黒体放射のデータは、図10.4と全く同じであるが、本図ではx軸が対数目盛ではないので左右対称のグラフとならない。
「大気」のグラフは、288 Kの大気からの波長あたり放射発散度を示している。しかし、「大気からの放射」といってもどうやって測定したものなのだろうか。地球の外側で地球からの放射を測定すれば、大地からの放射と大気からの放射が混じってしまう。
それに、大気(288 Kの空気)といっても、その厚さによって放射エネルギーは変わらないのか、水蒸気やCO2の濃度は非常に低いのになぜ黒体並みに光を射出するのだろうか、など悩みは尽きない。
この悩みは、大気の放射発散度(大気から出て行く放射)について考える代わりに、大気に吸収される放射について考えることで解決される(されてほしい)。
p163 下から12行目にあるように、吸収率=射出率とすれば、わかりにくい射出(発散度)の代わりにイメージしやすい吸収について考えることができる。
そういう目で図10.6を見ると、大気の曲線は288 Kの黒体(地球)から射出されている光のうち波長別にどのぐらいを吸収しているかを表している。黒体の線と大気の線の差が、大気に吸収されずに宇宙へ出て行ってしまう放射となる。
なお、p171 下から9行目の「熱放射はおもに水蒸気やCO2、O3による9.5 μm付近の狭い吸収波長帯によって射出・吸収される。」とあるが、図10.6の下の解説を見ても明らかなように、これは誤訳で、正しくは「熱放射は主として水蒸気とCO2によって吸収され、9.5 μm付近にオゾンの狭い吸収波長帯がある。」となる。
「大気」のグラフは、288 Kの大気からの波長あたり放射発散度を示している。しかし、「大気からの放射」といってもどうやって測定したものなのだろうか。地球の外側で地球からの放射を測定すれば、大地からの放射と大気からの放射が混じってしまう。
それに、大気(288 Kの空気)といっても、その厚さによって放射エネルギーは変わらないのか、水蒸気やCO2の濃度は非常に低いのになぜ黒体並みに光を射出するのだろうか、など悩みは尽きない。
この悩みは、大気の放射発散度(大気から出て行く放射)について考える代わりに、大気に吸収される放射について考えることで解決される(されてほしい)。
p163 下から12行目にあるように、吸収率=射出率とすれば、わかりにくい射出(発散度)の代わりにイメージしやすい吸収について考えることができる。
そういう目で図10.6を見ると、大気の曲線は288 Kの黒体(地球)から射出されている光のうち波長別にどのぐらいを吸収しているかを表している。黒体の線と大気の線の差が、大気に吸収されずに宇宙へ出て行ってしまう放射となる。
なお、p171 下から9行目の「熱放射はおもに水蒸気やCO2、O3による9.5 μm付近の狭い吸収波長帯によって射出・吸収される。」とあるが、図10.6の下の解説を見ても明らかなように、これは誤訳で、正しくは「熱放射は主として水蒸気とCO2によって吸収され、9.5 μm付近にオゾンの狭い吸収波長帯がある。」となる。
p173 式10.10
空の放射率を知りたい理由は、それがわかれば気温さえ測定すれば空からの下向き長波放射フラックスが計算できるからである。それと上向きフラックス(地表面温度より求められる)との差が純放射となり、夜間の熱収支計算に用いられる。
ここでは、空からの放射を地表付近の気温を用いて推定しているが、上空の気温を用いる必要はないのだろうか。
ここでは、空からの放射を地表付近の気温を用いて推定しているが、上空の気温を用いる必要はないのだろうか。
p174 下から8行目
この部分の指摘は正しいし、広く知られてほしいものである。一般に言われる「放射冷却現象」とは晴れた夜に表面からの放射による熱損失が大きくなった結果ではなく、空から入ってくる放射熱が小さくなった結果であると。
もし、「放射冷却とは、晴れた日の夜に地表面からの放射が大きくなることで起きる現象である。」と誰かが言っていたら、「違う!!」と叫ぶこと(心の中で)。
もし、「放射冷却とは、晴れた日の夜に地表面からの放射が大きくなることで起きる現象である。」と誰かが言っていたら、「違う!!」と叫ぶこと(心の中で)。
用語補足説明
本章では放射に関するいろいろな用語を定義しているが、いくつか留意すべきものをここにリストしておく。
・放射率
一般に、ある面における長波放射の放射発散度と黒体面からのそれとの割合。本書では、放射係数と呼ばずに放射率と呼ぶ(p162 2行目)。
・アルベド(Albedo)
p167 2行目の通り、日射の全波長域(0.3~4 μm)について積算した二半球性反射率(全方向に反射した光/全方向から入社した光)のことである。したがって、表面が方向性を持って反射するかどうかは問わない。
例えば、完全に反射する面として完全拡散面と完全鏡面を考えてみるとその2つの反射形態は全く異なるが、両方共アルベドは1である。ただし、水面のように反射面が入射角によって異なる反射係数を持つ場合には、方向性を持つ入射光(太陽光)の入射角によってアルベドは異なる。
・吸収率(Absorptivity)、吸収係数(Absorption coefficient)、吸光度(Absorbance)、Absorptance
これらの用語も他の論文を読む時に定義に気をつけるべきものである。うちいくつかは本書で説明されているが補足説明をする。
「Absorptance」は、AbsorptivityやAbsorption coefficientの代わりによく用いられる。
吸光度は表面の性質ではなく、不完全透明体を光が通過する際に、どのぐらいがその媒体に吸収されるかを表す係数である。
・放射率
一般に、ある面における長波放射の放射発散度と黒体面からのそれとの割合。本書では、放射係数と呼ばずに放射率と呼ぶ(p162 2行目)。
・アルベド(Albedo)
p167 2行目の通り、日射の全波長域(0.3~4 μm)について積算した二半球性反射率(全方向に反射した光/全方向から入社した光)のことである。したがって、表面が方向性を持って反射するかどうかは問わない。
例えば、完全に反射する面として完全拡散面と完全鏡面を考えてみるとその2つの反射形態は全く異なるが、両方共アルベドは1である。ただし、水面のように反射面が入射角によって異なる反射係数を持つ場合には、方向性を持つ入射光(太陽光)の入射角によってアルベドは異なる。
・吸収率(Absorptivity)、吸収係数(Absorption coefficient)、吸光度(Absorbance)、Absorptance
これらの用語も他の論文を読む時に定義に気をつけるべきものである。うちいくつかは本書で説明されているが補足説明をする。
「Absorptance」は、AbsorptivityやAbsorption coefficientの代わりによく用いられる。
吸光度は表面の性質ではなく、不完全透明体を光が通過する際に、どのぐらいがその媒体に吸収されるかを表す係数である。
光諸量の次元について
本章における光はエネルギーをもって表現されている。そのため、放射フラックスは、W/m2だし、放射輝度はW/(m2 sr)という単位を持っている。これらのエネルギーをヒトの比視感度で調整すれば、目に対する明るさでの議論ができるし、エネルギーのかわりに光量子の数を使えば、光合成などでの議論に役立つ。その場合でもすべての式がそのまま使え、単位を変えるだけでよい(波長特性については考慮する必要がある)。
以下に、光の秤量にエネルギーを使った場合(エネルギー表現)、比視感度に合わせたエネルギーを使った場合(光学表現)、光量子数を使った場合(光量子表現)の3つに対して、対応する諸量をリストした。
以下に、光の秤量にエネルギーを使った場合(エネルギー表現)、比視感度に合わせたエネルギーを使った場合(光学表現)、光量子数を使った場合(光量子表現)の3つに対して、対応する諸量をリストした。
章末問題の解答例
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