ファンレス通風筒
気温は、センサに通風して測定する必要があります。なぜなら、気温センサは気温を出力するセンサではなく、センサの温度を出力するものだからです。したがって、センサの温度と空気の温度の差をできるだけ小さくする必要があります。
温室では、気温センサには簡易な傘をつけて室内にぶら下げることが多いのですが、この方法では正確な気温を測定することはできません。日射の影響を強く受けるため、強日射下では実際の気温より4℃~7℃ぐらい高く測定することは珍しくありません。傘もつけずに測定すればもっと差が出てしまいます。 この現象を防ぐために、センサには通風する必要があります。一般的には、通風筒内で3 m/s以上で通風することが推奨されています。 気温の計測は温室環境の制御で最も基本的なことでありながら、窓開閉装置や暖房装置には通風のための機器(通風筒)が付属されることはなく、制御の正確さを損なう大きな要因となっています。 不思議なことながら、我が国では通風筒はアメダスで使用されるような高級品以外の市販品を探すことが難しく、有志により製作例が紹介されています。 こちらやこちらやこちらなど。 通風筒が普及しない理由には以下のことが考えられます。 ・市販品は高額で買う気がしない。 ・自作する能力や時間がない。 ・少しぐらい測定値が正確でなくてもかまわない。 これらの理由は、理屈になっていないようでもありますが、現状を改善する方法の一つとしてファンレス通風筒を開発(というほどのものではないが)しましたので紹介します。 このファンレス通風筒は、直径12cm、長さ3 m程度の塩ビパイプで、全体の上部2/3~3/4程度が黒く塗られており、残りは白色です。最上部はエルボー2つで雨が入らないように下向きにしてあります(タイトル写真)。センサは、最下部の開口部の端から約3cmのところに設置してあります。開口部から50cmぐらいは2重にしてパイプ温度の影響を受けにくいようにしてあります。 測定誤差が発生しやすい強日射時には、パイプの黒い部分が放射によって暖められ、中の空気に上昇気流が発生します。その結果、下部の開口部から外気が吸われます。この空気の温度を吸気直後に(パイプの中を通って気温が上る前に)測定してしまおう、というのが考え方です。 日射が弱い日は、パイプ内の上昇気流は弱くなりますが、そのような日はそもそもセンサに及ぼす日射の影響は小さいので誤差も小さくなると考えられます。 下図に、温室内に設置した3種類の放射よけ(傘、ファン式通風筒、ファンレス通風筒)の晴天日の測定気温を示します。 測定位置が、やや異なるため(10-20cm)に厳密には比較できませんが、傘のみに比べてファンレス通風筒はファン通風筒に近い値を示しており、実用的には問題がないようです。 ファンで通風するのが望ましいですが、電源を供給する必要があり、故障の可能性もあるファンを使わなくても簡単に製作できるファンレス通風筒はいかがでしょうか。 |